タイのカレーソーメンには細かくついた魚肉が必要であるが、この魚肉を石臼
クロック・ヒンでつくのが私の仕事になりつつある。
これは我が家の石(ヒン)臼(クロック)で、タイでは普通の大きさで直径13cmで
重さは4.5kgほどだが、別に臼を動かすわけではないから問題ない、つき棒も石だが
こちらは800gほどしかないが、片手でつくと結構疲れる。
御影石みたいな感じだが材質は私はわからないが、臼の表面は形を作るため削りだした
模様が残っているだけのシンプルなものである。
食材の仕入れと野菜の細断が私の仕事でミヤさんはスープ作り、娘がその間に私が
やれなかった家事の一部をやった後野菜の袋詰めやその他の出店準備と、最近分担が
定着しつつある。ただし、魚肉をつくのは毎日の定型作業ではないため、ミヤさんも
手が回らないことがあり、それを私に回し始めたのである。
これが魚肉で、煮込んだ魚の骨と皮を取り除きほぐしたものであるが、これも時々やら
されることがある。魚は大体バラクーダであるが、時によりプラチョーン(スネーク
ヘッドフィッシュ)になったり大きなマテアジになったりするが、先日やらされたのは
いいシマアジだった。タイは面白いことに高級なものなどなく一様に量り売りである。
だから話はちょっと飛ぶが、アオリイカであろうがヤリイカであろうが量り売りなので
新鮮ないいアオリイカが安く手に入るのである。
話を戻すが、こちらが身をほぐした魚肉であり、これを石臼でつくのである。
最初のうちはこんなもの簡単だと高を括っていたのだが、どうしてつき棒でつくのは
いいが棒を持ち上げるのが大変である。 理由はいたって簡単、臼の中心をついている
ので魚肉の塊の間の空気が抜けて、つき棒と魚肉感がへばりついてしまうからだ。
つき棒を両手で持ったり、持ち上げるとき少しこね気味にしたりしながら汗を垂らし
つつなんとか2臼ほどついたが、次からは何となく要領を覚えた。
臼の中心をついているつもりでいても、いつも中心というわけにいかず、少し外れると
石と石でカキンと金属音に近い音がする時があるが、その方が棒を持ち上げやすい。
それで意識的に中心ではなくちょっと手前をついていたら、崩れた魚肉が臼の壁面を
せりあがっていき、上で臼の内側に落ちるからそこをつくようにしてやっていたら、
結構効率的につくことができたのである。
こうしてつきあがった魚肉は粘りはそんなにないが、それでもお玉で簡単に臼から
剥ぎ取れるのである。
このことをミヤさんに話したら、「それが普通なの。あんたが知らなかっただけ」と
鼻であしらわれてしまった。