ここ1週間ほど日本食レストランだけにかかりっきりだったミヤさんだが、気を取り
直したらしく、昨日片付けを終えた私に「ピーノ、ガティ(ココナッツミルク)3キロ
買ってきて」と指示してきた。
実はもうおよそ2週間ほど前になるが、1週間に一度行く大きなタラートと交渉して、
そこでもカレーソーメンの店を出し始めたのである。
最初の2~3日は売り上げが多いと喜んでいたのだが、その後はめっきり売り上げが
落ちたようで、それでもシラチャの屋台は何とか頑張っていた。
でもさすがに2足どころか3足の草鞋では疲れたようで、屋台は暫く休みと言い出した。
今日からまたいつもの生活に戻るんだと思いながら帰宅したのだが、家の中から聞き
なれない音が聞こえるのである。
家に入るとおかしな円盤状のものがあっちへ行ったり、何かにぶつかるとこっちへ
来たりと動いているのである。
「なんだこれ」と言うとこれと言って梱包箱を示してきた。箱を見ると日本語で
「家庭用掃除ロボット」と書かれている。「こんなもの買って無駄遣いじゃないのか、
高かったんだろ」というと、ニコニコ笑いながら「これ」と言って携帯の通販のカタ
ログを見せてくれた。そこにはなんと103バーツと書かれていたのである。
ロボットが本当に103バーツ(360.5円、1B=3.5円として)?、そんな訳ないだろ」
と言ったのだが確かに103バーツであった。
改めて梱包箱を見ると、すべて日本語である。
梱包箱に書かれているのは日本語であり、注記などもすべて日本語であるが、どこにも
Made in Japanの文字が書かれているわけでもなく、製造元の名前も入っていない。
側面の注意書きを見てもそれらしい名前も見つからないのだが、注意書きの文言を
読んでいて奇妙なことに気付いた。普通の日本人が書いた取扱説明書とは、表現方法が
すこしニュアンスが違うのである 。これはどう見ても日本語を知っているタイ人か
中国人が作った文章と思われる。
まあ高額の買い物をしたわけでもなく、実際に通販通りの物が送られてきて、私の懐が
傷んだわけでもないからまあいいかなどと思いながら、私も興味があったので実物を
ひっくり返してみると、薄い不織布が張り付けられていて、これでクリーニングする
のだと納得した。
ところでこれが日本製かどうかは別として、日本では一体いくらくらいするのか
Google の楽天市場をググってみたら、なんとピンからキリまであったが、それでも
一番安いのはどのぐらいだろうと調べたら、なんと送料別で889円というのがあった。
ところで、この掃除ロボットって本当にきれいになるのかまだ納得いかなかった私は、
箱を見たりクリーナー面を見たりしていて、おかしなことに気付いた。
箱に書かれているのは「髪、ペットの毛、ホコリを取り除くことができます」と
書かれており、クリーナー面には不織布が貼られているだけで、小さなごみの吸引孔等
どこにもないのである。そこで試しに動いているクリーナーの前面に、ヒマワリの種の
殻を置いてみた。
殻はクリーナーに吸い込まれたと思いきや、クリーナーの下に入っただけで別に吸い
込まれたわけでもなく、場所を変えただけであった。
つまりこのクリーナーは髪やホコリを除去するだけで、ゴミを吸い取る機能はないので
ある。まあコップの破片などは掃除機を使うのが一番安全であろうと思う。
しかしそれにしてもこれは勿体ない買い物だったと思う。
さすがミヤさんもこれには気が付いたらしく、今日はこのロボット部屋の片隅で静かに
していた。